2011年11月

11月30日


朝、劇場。


二期生、演出ゼミの発表会。


参加した俳優たちの生き生きとした感じがなかなかいい。


体調、最悪。


事務仕事を中断して、早々に帰宅。



11月29日


帰国。


三日ほど前から鼻水がとまらず、機中は落語(文治ほか)を聞きながらうとうと。


半睡時幻覚のような感じで、『霊戯』改作のアイディアいろいろ。


もちろん、大半は役に立たないただの妄想だが、明日からすぐにでも作業にとりかかりたいような感じ。


うーん、今回の香港は、何かが不完全燃焼であったらしい。



11月28日


午前中、クローズド会議で今後の打合せ。


さまざまな計画を自在に組み合わせて広げていくダニーの手法は、いつもの通り見事だが、今回は周囲にいくつかのとまどいも。


論議の途中で、珍しく苛立ったダニーを見る。


夜、『霊戯』上演。


この作品の難しさ、そしてまた、それゆえにこそ郭宝崑の志の高さをあらためて痛感。



11月27日


東京から出演者到着。


午後から会場で、テクニカル・リハーサル。


事前に図面のやりとりをしていたのだけれど、舞台の奥行きが1メートルほど足りない。


反響の少ない会場音響とあわせて、日中の出演者たちはちょっと不安そう。


照明合わせは順調に進む。



11月26日


会議二日目。


午前中のセッション、スカイプで参加の内野儀さん『二十一世紀に向けての身体論』圧巻。


ただし、身体=bodyにいささかの違和感。


あるいはbody=身体が誤りなのか。


機会があったら内野さんに確かめよう。



11月25日


終日、会議。


同時通訳つきで内容は概ね把握出来るのだが、臨機応変な会話への介入はちょっと無理。


聞き役に徹しながら、能、昆劇交流プログラムの次のステップについて思いをめぐらす。


いつも、何とかここまでは来る。


この先に何がある、というか、なにを求める?



11月24日


機中、『猿の惑星 創世記』鑑賞(やれやれ)。


午後、香港着。


夜、アートセンターのリハーサル室でワークショップ。


南京昆劇院の孫晶、唐沁らを含め、10人の受講生とともに三時間。


優秀なinterpreterに支えられて、気持ちよく進行。



11月23日


夕方から、新宿歌舞伎町。


もうすぐ二歳になるノアちゃんの母親になった、水無潤さんを囲んで、『ダントンの死について』の同窓(?)会。


充実した韓国料理とマッコリの杯が並ぶ、和気藹々の宴席を楽しむ。


終わった舞台のこのような集まりは、ぼくにとっては初めての体験。


「鴎座」の手がかり、こんなところにも何かありそうな……



11月22日


午前中の会議を終えて、帰宅の途中、劇場前で、アカデミーⅡ期生の劇作家樋口ミユさん、宮沢章夫さんと遭遇。


ふたりの立ち話に横入り。


メディアとしてのブログ、身体の延長としてのツイッター……など、思いつきをペラペラ。


なんだろう、宮沢さんの顔をみると猛然と喋りたくなる。


先を急いでいたらしい宮沢さんの愛想笑いに気づかぬ、迂闊者。



11月21日


劇場で事務仕事いろいろ。


24日からは香港で、能、昆劇交流プログラムの今年最後のセッション、ワークショップ&『霊戯』上演。


帰国は28日。


12月のスケジュールは、座・高円寺年末恒例「ピアノと物語」二作上演などなど、いささか過密。


年末、年始休みまでのひとっ走り、さて、足腰は大丈夫かね。



11月20日


『The Spirits Play 霊戯』、四日間、五ステージの上演、終わる。


贅沢な人のつながりに支えられて、個人劇団「鴎座」らしい作業が出来た。


制作チームをはじめ、キャスト、スタッフの仲間たち、そして来場者の皆さんにこころからの感謝。


28日の香港での試演を経て、来年は東京、香港、そして宝崑没後十年を記念するシンガポールでの続演が控えている。


さらにここに来て、南京、フィリピンでの上演の可能性も。



11月19日


時折、嵐のような激しい降りの雨。


三日目の『霊戯』は、マチネ、ソワレの二回上演。


今日の上演(ことにマチネ)は、納得のいく出来。


俳優のアンサンブル、緩急自在な時の経過など、作品がたしかに演者の手に入ったことを確信。


「鴎座」に、はじめてレパートリーが生まれた。



11月18日


『霊戯』上演、二日目。


超満員とはいえない客席だが、昨日も今日も、足をはこんでいただいてうれしい顔がそこここに。


チケットレス、情報発信もごく限られた上演に、手間隙かけて辿り着いていただいたひとりひとりへの感謝とともに。


自分にとっての「小劇場」は、単なる興行場所では決してあり得ない。


遥か昔、西麻布でのアンダーグラウンド・シアター自由劇場立ち上げの頃を、しきりに思う。



11月17日


『霊戯』上演、はじまる。


会場のd-倉庫は、はじめての来場者に場所がちょっと分かりづらい以外は、使い勝手のいい小劇場。


ドリンクサービスのある待合ロビーの感じも、なかなか。


舞台、客席ともに集中力のある、いい上演になったと思う。


終演後、演劇博物館館長の竹本幹夫さんと、「死者の劇」としての能をめぐるアフタートーク。



11月16日


舞台稽古×2。


十年来の懸案だった郭宝崑『スピリッツ・プレイ』が、『The Spirits Play 霊戯』としてようやく実現。


空間の共有、即興、演劇の具体性など、多くを学んだ稽古場だった。


参集してくれた俳優六人、そしてスタッフに感謝。


作者、宝崑に見せたかった。



11月15日


場当たりのあと、西村、鈴木両組で、通し稽古二回。


照明、音響、字幕とのフィッティング、揚げ幕から出入りなど、基本をチェック。


一回目の西村組をウォッチしたフィリピンの旧友、演出家のガルディが「お前のアジア演劇だね」と喜んでくれた。


明日、衣装をつけて、もう一度、舞台稽古。


客席は、まだまだ、大いに余裕あり!



11月14日


日暮里、d-倉庫。


舞台、音響、照明の仕込みと、照明づくり。


舞台監督の鈴木章友くん、照明プランの斎藤茂男さん、その他、いつものメンバーによる手際のいい作業。


さて、初日まであと三日。


客席は、まだまだ、大いに余裕あり!



11月13日


明日からの小屋入りを前に、稽古場での最終稽古。


ここへ来て、銕仙会から参加のダブルキャスト、清水寛二さん、西村高夫さんの表現法が次第に異なるようになってきた。


それにつれて、全体の印象はもちろん、他の出演者の表現法にも微妙な揺れが生まれている。


この出演者にはその心配がないにもかかわらず、「形をなぞらないように」のダメだしを繰り返す。


つまり、あきらかに自戒の言葉。



11月12日


稽古前、荒川線を途中下車してとげ抜き地蔵を参拝。


「おばあちゃんの原宿」通りを散策する。


赤パンツの店、大蒜屋、塩大福などの名物店をはじめ、気さくで商売熱心な商店街には若いカップルも大勢。


価格設定は高円寺とくらべると、全体にやや高めか。


店じまいの張り紙をした人形焼き店のシャッター前に、ふと立ち止まるお年寄り(ぼくもだが)の姿が印象的。



11月11日


2011年11月11日。


略式で記すと「111111」と「1」が並ぶ。


こんな数字遊び(?)に気づくと、このサイトの遊び仲間だったいまは亡き「01(レーイチ)」さんを思い出す。


たわいなのない数字遊びにかこつけて、お暇サイトを活気づけたり、時に辛辣な批評を寄せたり、楽しい交流がつづいた。


端倪すべからざるその片鱗は、サイトに残してある「ベケットの間」に。



11月10日


『霊戯』稽古前の午前・午後を座・高円寺で。


午前の会議、ミーティングに引きつづいて、午後はアカデミーⅡ期生の演技ゼミ授業。


10月からの教材は、修了上演で取り上げる、エドワード・ボンド「戦争三部作」のテキスト。


演技コース研修生たちの芝居づくりに、予想以上の手応えあり。


来月に迫った稽古インが楽しみ。



11月9日


にしすがも創造舎の稽古で嬉しいのは、JR大塚駅から創造舎のある新庚申塚までの都電荒川線の移動。


五年ぶりの再会だが、車両のデザインがいろいろ増えた。


ぼくも知らない超レトロな外観もある。


車両の運行も比較的多く、その上、どんな時間帯も案外混み合っている。


昔ながらのコントローラとエアブレーキの運転席の後ろになかなか立てないのは残念だが、出発前にチンチンとなるベルの音や独特の横揺れが、懐かしくもここちよい。



11月8日


今日から三日間、終日、にしすがもと高円寺を往復しながらの過密日程がつづく。


充実した『霊戯』稽古場のおかげで、さほどの苦もなく乗り切れそう。


ただし、いつの間にかの身体疲労には気をつけないと。


間もなく、大動脈解離発作二周年。


油断は禁物。



11月7日


『霊戯』の稽古場、にしすがも創造舎へ移動。


にしすがもでの稽古は、五年前の第Ⅱ期上演活動最初の作品『ハムレット/マシーン』以来。


旧音楽室のスタジオに足を踏み入れたとたん、なんだかひどく懐かしい感じがしてこころが弾む。


終幕部分つくり直しのあと、はじめての通し稽古。


宝崑没後九年……ようやくここまで。



11月6日


このところ、毎日のように、『霊戯』のweb予約に申し込みがある。


「鴎座」サイトを立ち上げた時、「見てやるよ」という書き込みが15人分たまったら次の上演の準備を開始すると記した。


今回はその15人を待てずに決めた上演だったが、それでもこうした反応があるのはほんとうに嬉しい。


予約フォームに記入された見ず知らずの方々のお名前。


手間隙をかけて劇場に来てくださるひとりひとりに、精一杯の「鴎座」のいまを手渡そう。



11月5日


『霊戯』稽古を休み、出演者、スタッフ連れ立って青山銕仙会に。


谷本健吾さんの煌の会。


我々を招待して下さった清水さんは仕舞『井筒』と会主の『弱法師』の後見、西村さんは仕舞『放下僧』と『弱法師』の地謡。


ほかに、銕仙会、現当主の舞囃子『龍田』など。


『龍田』移神楽で、銕之丞さんが能舞台に描き出したおおらかな曲線がこころに残った。



11月4日


『霊戯』、今日の稽古は後半部分を集中的に。


とりあえず、終幕までのスケッチを終える。


あとは通し稽古を繰り返しながら、余計な枝葉(演出)を取り除いていく作業。


あるがままの空間、あるがままの声と体をすっきりと。


明日は稽古を休み、銕仙会で能見学。



11月3日


三十分ほど早く稽古場入りした昆劇のふたりが自主稽古。


彼らの目指す目標の高さが頼もしい。


稽古の方は、清水さん、西村さんが本格的に参加して、冒頭から三分の二ほどの流れがほぼ見えてきた。


島くんの音響プランもようやくスピーカーから。


最後に、終盤にある能からの引用のために用意したふたつの候補を、実際にお二人に演じて見せていただく。


まことにまことに贅沢な稽古場の日々。



11月2日


来年度の「あしたの劇場」(座・高円寺の子どもプログラム)について、区の関連部門との打合せ。


あと少しの積み重ねで、公共劇場のあたらしい事業形態が生まれそうな感じがする。


思いを「かたち」にするのは易しくないが、「かたち」を生かす(生命を与える)のはさらに難しい。


思いを理解する者たちが集まり、各々の知恵を出し合いながら、具体的な歩みを一歩一歩。


いつか「かたち」は思いを離れ、一人立ちして人々の手に。



11月1日


『霊戯』稽古場の充実した日々。


この舞台を、なんとか500人の観客に届けたい。


チケットなし、ネット、メール予約のみという今回の試みの行方や如何。


現在、全ステージ、大いに余裕有り。


予約、ならびにご吹聴、よろしくお願いいたします。