5月31日

『化粧』千穐楽。

『ユーリンタウン』の動員も三日間好調で、劇場オープンもどうやら一段落。

そのせいだろうか。

自分の芝居について、じっくり時間をかけて考えてみたいという欲求が。

このまま本物の飢餓状態まで、いましばし。

5月30日

座・高円寺2で上演中の『化粧 二幕』が通算上演回数600回を迎えた。

上演後のカーテンコールでの簡単なセレモニーのあと、劇場前ロビーでお祝いの乾杯。

あたらしい劇場の杮落とし企画の実現までには、いろいろ紆余曲折はあったものの、昨日初日の『ユーリンタウン』とあわせて、それなりの個性、存在感を示せたのではないか。

準備期間と違って、いったん開場した劇場は一年三百六十五日、休むことなく走りつづけていなくてはならない。

まず、肩の力の抜けたのびのびとした雰囲気づくりを丁寧に。

5月29日

『ユーリンタウン』、初日。

終演後、満員の客席からの暖かな拍手。

ここ二十年間あまり、節目節目での流山児祥との不思議な遭遇を思う。

彼とは「同床異夢」ではなく「異床同夢」の巡り合わせなのかも知れない。

一カ月興行の成功をなんとしてももぎ取ってほしい。

5月28日

『ユーリンタウン』の舞台稽古を見終えて、「過程」と「仮説」との間合いの取り方の難しさについて考える。

先を見通すための「仮説」をには、いつも精一杯の論理とともに、大胆な抜け穴、あるいは空白の余地を残しておいかなければならない。

大抵の場合、次のモノゴトはその抜け穴、空白の方に生起する。

だからといって、俄か運命論者よろしく、すべてをなるがままに放り出しておけばいいというものでもない。

底意地の悪い「意図」の罠を回避するためにも。

5月27日

一週間ぶりに座・高円寺へ。

開講後二カ月を経た「劇場創造アカデミー」について、担当の酒井さんから受講生面接の報告を聞く。

手探り状態の中で、当初の目的を見失わない舵取りの重要性をあらためて思う。

何はともあれ、講師陣の熱心な協力に感謝。

一階の「座・高円寺」では、流山児★事務所『ユーリンタウン』の稽古佳境。

5月26日

自宅作業は今日まで。

明日から劇場に出勤。

「現場」の雰囲気にのまれて元の木阿弥にならぬよう用心々々。

作業予定の連鎖に振り回されることなく、この機会に自分らしい生活ペースを見定めたい。

(その場の)自分をもっと疑えということか……

5月25日

予定外の休養期間から通常の日々へ。

作業ペースを慎重にはかりながらゆっくりと歩み出す。

ついでに(?)、引っ越し以来ほったらかしになっていた歯の治療を再開。

自宅から歩いて一分の歯科医を見つける。

まだ幼い女医さんのお嬢さんが治療室のまわりで遊ぶ和やかな雰囲気。

5月24日

健康の快復とともに、日常の五感も戻ってくる。

朝食のベーコンエッグ、咲き始めの紫陽花。

自転車に乗りながら感じた風と、どこからかのレモンの香り。

精神的な余裕のせいも多分にあるだろう。

今日のクライマックスは、夜半過ぎの雷と激しい雨音。

5月23日

体はどうにか復調のきざし。

どうということはない日々の営みを、日記で「中距離走」になぞらえたりしたのは、蓄積する疲労の自覚だったに違いない。

なにはともあれ、他人に迷惑をかけない「マイペース」について反省的な内容吟味が必要。

いつまでたっても「面白い」「面白くない」が唯一の価値基準というのもね。

気づかぬままに壊れやすくなっていく身体への好奇心をもっと。

5月22日

休養日、二日目。

というか、無理に自分にそう言い聞かせている感じ。

今回予定していた東南アジア各国訪問で、あたらしく出会うはずだった若い世代の演劇人たちについて、思いを巡らす。

いまから三十年前、黒テントの「アジア演劇」テーゼはかなりのとまどいを持って迎えられた。

短くはない歳月を経て、自分の見る範囲では状況の変化はあまりにももどかしい。

5月21日

休養日。

可楽、文楽、志ん生、のCD鑑賞を半日。

「富久」「鰻の太鼓」「らくだ」など、同一演目の聞きくらべを楽しむ。

自在の志ん生、端正の文楽に対して、可楽の省略が興味深い。

細部の「くすぐり」や「掘り下げ」を回避して、物語の流れそのものの面白さを淡白に追う技巧とも。

5月15日-20日

不覚。

内蔵不調。

原因究明まで、しばしメンテ休業。

東南アジア各国へ出向いての劇作家とのミーティング予定(19日出発予定)を泣く泣くキャンセル。

そういえば、先週ばたばたと更新したパスポートの肖像写真の表情がちょいと不景気。

5月14日

日本最大の自動車メーカー本社で、香港の演出家ダニー・ユンをまじえて来春の企画に向けてミーティング。

途中から、作曲家の服部隆之さん、観世流能楽師の浅井文義さんも加わる。

メーカー側からは技術者、デザイナー、管理、広報部門の責任者など。

課題の多いプロジェクトだが、初対面の服部さん、旧知のダニー、浅井さんとの共同作業が楽ししみ。

夕食会で、服部さん、浅井さん、演出コーディネーターの高宮さんと雑談いろいろ。

5月13日

劇場をあけて二週間。

ひと息つく間もなく、八月半ばまでの、いささか莫迦げた過密スケジュールに突入。

ここからは、陸上競技でいえば、一番きつい中距離走。

いろいろな意味で、何度目かの大きなターニングポイントであるのことは確かで、仕方ないといえば仕方ないと言い聞かせながら、とりあえずスタート。

知らない自分との出会いを期待して、性懲りもなく。

5月12日

昨日のつづき。

自分が演劇をつづける根拠を繰り返し疑う。

最大の理由は、「演劇とは何か」について、いまだにはっきりとした指針を抱けないでいること。

演劇人というよりは、演劇の現状への異議申し立てからの発想を繰り返す、演劇運動家、あるいは演劇活動家というスタンスは、おそらく、終生、変えられない。

これもまた度し難い「演劇依存症」の一ケースであると、わかってはいるのだが。

5月11日

劇団協議会機関誌の座談会に出席。

テーマは「演劇を税金でつくる正当性について」。

「正当性」ではなく「正統性」を主張する平田オリザさん。

専門的な文化官僚の必要を説く高萩宏さん。

もう少し真っ向から議論できたはず、と反省。

5月10日

たったひとりでは生きられない。

誰もが人の群れの中に生きている。

ただし、その群れはそんなに大きなものではないだろう。

せいぜい百人程度といったところか。

「わたし」という現象は、いつも、その百人の回路の集積としてある。

5月9日

本日の作業リスト、昨日からの持ち越しを入れて7項目。

夕食までに1.5項目。

まあ、仕方ないか。

考えてみれば、オペラ『ルル』美術プランのための楽譜とテキストの整理とノート取りが、半日なんかで目途がつくはずがない。

以前ならば、このまま徹夜体勢かも……

5月8日

今日から三日間、自宅作業。

本日の作業リスト14項目(もっとも、1項目目は入浴だったけど)を、メモに印をつけながら順番に片づける。

夕食までに12項目。

あと2項目は明日に持ち越しとする。

夕食は、大好物のアジフライを堂々四枚。

5月7日

来年に予定している仕事との関連で、霞ヶ浦の水資源再生プロジェクトに携わるさまざまな人びとの取材映像を見る。

霞ヶ浦の自然の崩壊は、1970年代後半からの大規模な水防護岸工事に由来するという。

切断された生態系はそれにともなう独自の水浄化能力も失わせ、以後、二、三十年で一気に汚染が進んだらしい。

護岸コンクリートの上に、あらためて運んできた土を積み上げていく漁師さんたちの姿が印象的。

バブル期、埋め立てによる宅地「乱」開発後遺症の快復までには、今後、一世紀の時が必要とか。

5月6日

一日中しとしと降り続ける雨模様。

重く湿った空気は嫌いではない。

こころのギアを減速ながら頭と体のネジを少しゆるめる。

劇場暮らしの課題がひとつ。

事務所のデスクでまとまった文章書きが出来るようになること。

5月5日

劇場はなにやら落ち着いて、以前からずっとそこにあったような佇まい。

スタッフたちの立ち働きも準備の時とはどこか違う感じが。

おそらく、ぼくの役回りや生活もまた。

しっかり腰を落ち着けて、視線をどこまで遠くへ投げかけられるか。

もしかしたら、これって、生まれてはじめての「仕事」?

5月4日

劇場オープンにかまけて手つかずだったモロモロを片づける自宅作業日のつもりが、結局、丸一日、自主休養日。

午前中はやわらかな陽ざしがゆっくりと変化する庭先をながめ、午後からは金木犀の香りに誘われて近所を散歩。

あとは本も読まず、音楽も聞かず、ただ機嫌よく「ぼうっ」と時をやり過ごす。

夜、横浜に出かけていた啓子と携帯で連絡を取り、近所のネパール・カレー屋さんで夕食。

家に戻り、手帳のスケジュールを整理しながら、言い訳めいたため息ひとつ。

5月3日

小さな子供用椅子に座って絵本に読みふける子どもたち(絵本カーニバル)。

大道芸人が中空に投げ上げたボールの行方を、自分のことのように真剣な眼差しで追う大勢の人たち。

劇場の内外、町中で出会った笑い声も拍手も(「感動」や「集中」も)、どれもが自発的でこころからのものであるのがわかる。

オープンから三日、劇場は思わぬ数の人びとの祝福を受けながら、『化粧』の上演、80席のカフェともども、とりあえず順調に旅立った。

大きく息を吸って呼吸を整え、肩の力を抜くこと。

5月2日

座・高円寺、開館、二日目。

今日、明日、二日間は、高円寺九商店街とともに「びっくり大道芸」も開催。

近隣三店が共催した、劇場前餅つきをイントロに、正午、駅北、南口、同時のブラス演奏で賑やかに幕開け。

南北に長い高円寺の町を、終日、様子見に歩き回る傍ら、一時間ごとに、劇場に戻って来客の応対。

最後、劇場前の最終演目、贔屓の加納真実のパフォーマンスで締め。

5月1日

座・高円寺、オープン。

今日前半の主役は、「絵本カーニバル」に遊びに来た子どもたち。

ワークショップの町づくり工作もなかなかなかなかだったが、劇場前のコンクリート広場で、ペットボトルひとつを玩具に駆け回る、三歳児、四歳児たちの賑わいがうれしい。

カフェ「アンリ・ファーブル」開店、夜の「化粧 二幕」初日、とこちらも順調。

内情はともかく、全体にゆったりと落ち着いたいい一日になった。